バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

漫画「バンビ〜ノ!」のミスに感じた「料理の定義」の難しさ(続)

先週に引き続いて漫画「バンビ〜ノ!」がミスを出しましたので、再度これにかこつけて食の歴史に関する駄文を書きます。前回はジャガイモでしたが、今回はトウガラシでした。トウガラシもジャガイモと同じく南米を起源とする作物で、ヨーロッパに導入された…

漫画「バンビ〜ノ!」のミスに感じた「料理の定義」の難しさ

小学館の週刊誌「スピリッツ」に「バンビ〜ノ!」という漫画が連載されています。イタリア料理店を舞台とした若い料理人の成長譚です。今週号で見逃せないミスがあったので記事にします。劇中ではトマトの致命的な病気が世界的に大流行してトマト生産が壊滅…

比嘉照夫の特大ブーメラン

先日EM資材に農地の放射性物質を減らす効果がないことを書きましたが、予想通り信者のみならず親玉である琉球大学名誉教授の比嘉照夫氏が結果を強引に曲解して自信たっぷりにEM資材の効果を喧伝しています。 比嘉照夫氏の緊急提言 甦れ!食と健康と地球環境 …

EM菌は放射性物質を減らさない

福島県は土壌にEM菌資材を投入したら放射性物質が減少するかどうかを圃場試験により検証していましたが、その結果が公表されました。 農用地等における「民間等提案型放射性物質除去・低減技術実証試験事業」試験結果について(第2報)(福島県農林水産部)…

TPPと農業についてもう少し

一口に農業と言っても、色々なケースがあります。品目:米、野菜、果物、畜産…… 地域:平野部、中山間地域、都市近郊…… 形態:専業、兼業、販売、自給…… 経営:家族、法人(企業)…… 販売:JAのみ、直販…… 志向:地域、日本全国、海外輸出……当然の話ですが、…

TPPと農業について少し

農業・農学の世界では、昨年あたりからTPPの話で持ちきりです。意外に思われるかもしれませんが、農学研究者の間では、TPP賛成派も少なくありません。賛成派・反対派の意見を少々乱暴にまとめてみます。賛成派 ○「強い農業」を目指すべき ○日本農業には外圧…

腐らない野菜の恐怖

明日から園芸学会(野菜・果物・花の学会)に参加します。私は研究者ではないので発表を見るだけです。質問は必ずしますが。そのため、強引ですが野菜について少々書きます。農薬や肥料を全く使わない「自然栽培」「自然農法」なるものが根強い支持を受けて…

「奇跡のリンゴ」は大嫌い

木村秋則氏の「奇跡のリンゴ」で検索してこの日記にたどり着く方がいるようなので、ちょっと書いてみます。 昨年の8月に少し触れましたが、私はこの人物はただの嘘つきだと思います。 ワサビや食酢を使っている時点で完全に「無農薬」の定義から外れますし、…

飼料稲・飼料米 その3 作物としての特徴2

今回は、飼料稲・飼料米の品種改良について説明します。まず、専門用語の解説をしておきます。 品種改良を「育種」と呼びます。英語では「breeding」です。育種の技術者、研究者を「breeder」と呼びます。ペットを飼育したことがある方ならば「ブリーダー」…

飼料稲・飼料米 その2 作物としての特徴1

言うまでもありませんが、飼料稲・飼料米とは稲の1種です。「コシヒカリ」や「あきたこまち」のような食用米とは、品種が違います。今回は、飼料米・飼料稲の作物としての特徴を説明します。(1)栽培 食用米に比べて大型化するので収穫用の機械には調整が必…

飼料稲・飼料米 その1 概略

今回は何回かに分けて飼料稲・飼料米の解説をします。なお、ここでいう「家畜」とは牛を指すとお考え下さい。まずは、概略を説明します。(1)飼料の分類 家畜の飼料は大きく粗飼料と濃厚飼料に分かれます。 粗飼料とは、わかりやすく言うと「草」です。一方…

耕作放棄地 その4

私見ですが、耕作放棄地の管理は2つに分けられます。「いずれ農地に戻すことを前提とする」場合と、「農地に戻さない」場合です。この2つの場合について説明します。東大の研究者に「両者は厳密には区別できない。両立は可能だ」と指摘されましたが、便宜上…

耕作放棄地 その3

(2)復元 既に放棄されている農地を復元し、農業活動を再開することについて考えてみましょう。 基本的には、既に述べた耕作放棄地防止策と同じです。何らかの形で栽培を行うことで農地として維持していくことを目指します。 ただし、農地が一度放棄された…

耕作放棄地 その2

先週後半は日本農業経営学会に参加していたので更新ができませんでした。今回は耕作放棄地の対策を考えます。(1)防止 当たり前ですが、耕作放棄地ができないようにすることです。何らかの形で農業を行い、農地として維持していくのが理想です。 (1-1)集…

耕作放棄地 その1

現在の日本の農業を語る上で避けて通れないのが耕作放棄地の問題です。 厳密な定義が難しいので正確な面積はわかりませんが、すでに40万haを超え、埼玉県全体より大きいとされています。1.なぜ耕作放棄地が発生するのか 理由は簡単です。農業を続けることが…

無農薬を批判する その2

今回は前回とは少し傾向を変えます。 「販売用の作物に農薬を使っている農家でも、自家消費用の作物には農薬を使わない」というよくある言説(都市伝説とも言えますが)を考えてみます。まずは、「自家消費用の作物」の定義を考えます。考えられるのは次のよ…

無農薬を批判する その1

農業の世界のトンデモと言えば、「無農薬」「無肥料」「EM菌」などが有名です。 今回は無農薬を考えてみます。結論から言うと、「無農薬」は原理的には可能です。ただしそれには、以下の全てがそろうことが必須です。(1)資金・人手 農薬なしで雑草や害虫・…

米のとぎ汁腐敗液の恐怖

幸いなことに、「米のとぎ汁発酵液」はネット内で広まっているだけで、実践している人はそれほど多くないようです。 やはり、いかにも怪しいことと、失敗する確率が高いからでしょうね。さらに、テレビや雑誌などのマスメディアが取り上げていないことも大き…

人間は雑食動物です その3

(6)日本人は肉を食べなかったのか 日本各地の遺跡で様々な種類の動物の骨が見つかり、さらに骨には肉をそぎ落とした痕跡がよくあるそうです。また江戸時代の大名屋敷のゴミ捨て場の発掘調査から、武士の間では肉食は珍しいことではなかったということが推…

人間は雑食動物です その2

(3)体のサイズと食性 当然ながら、哺乳類では体が大きくなるほど要求するエネルギーは多くなります。ところが、体重とエネルギー要求量は比例しません。 エネルギー要求量は、体重の3/4乗に比例します。これをクライバーの規則と言います。 具体的に言うと…

人間は雑食動物です その1

マクロビオティック系やベジタリアン系のトンデモさんの中には、「人間はもともと草食動物だ」と主張する人が多いようです。今回は人間が雑食動物であることを明らかにし、その主張を批判的に考察してみます。「草食動物」「雑食動物」というものの定義も難…

燃料か食料か

今回は、バイオエタノールについて語ります。海藻の話はよくわからないので、パスします。農地で作物を栽培し、発酵させてアルコール(エタノール)を取り出して燃料として利用するものです。エタノールを燃焼させた際に発生する二酸化炭素は、元は作物が成…

農業と地球温暖化 その2

今回は畜産とメタンについて述べます。前回述べたように、有機物が還元状態に置かれるとメタン細菌の作用によりメタンが発生します。 農業において水田土壌以外に「有機物」「還元状態」「メタン細菌」という条件がそろうのが、反すう動物の消化管の中です。…

農業と地球温暖化 その1

地球温暖化が事実であるとして意見を述べます。実は農学者にとって、地球温暖化問題はあまり歓迎できるテーマではありません。 農業が大きな原因の一つとして批判されているからです。 昨年秋に北海道大学で作物学会が開催されました。その中で地球温暖化問…

食料自給率 その2

(4)食料自給率は上げた方がいいのか低くてもいいのか これは非常に難しい問題です。そもそも日本の食料自給率が下がったのは、食料を国内で生産するより外国から買った方が安いとか、貿易摩擦解消のために外国から食料を輸入する必要があるなど、経済・政…

食料自給率 その1

最近よく話題になる食料自給率について、個人的な意見を述べます。(1)食料自給率って何? 国内で消費された食料のうち、国内で生産された物の割合を示します。 毎年多少の変動はありますが、最近ではカロリーベースで約40%、金額ベースで約65%です。この…