バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

2011-01-01から1年間の記事一覧

飼料稲・飼料米 その3 作物としての特徴2

今回は、飼料稲・飼料米の品種改良について説明します。まず、専門用語の解説をしておきます。 品種改良を「育種」と呼びます。英語では「breeding」です。育種の技術者、研究者を「breeder」と呼びます。ペットを飼育したことがある方ならば「ブリーダー」…

飼料稲・飼料米 その2 作物としての特徴1

言うまでもありませんが、飼料稲・飼料米とは稲の1種です。「コシヒカリ」や「あきたこまち」のような食用米とは、品種が違います。今回は、飼料米・飼料稲の作物としての特徴を説明します。(1)栽培 食用米に比べて大型化するので収穫用の機械には調整が必…

飼料稲・飼料米 その1 概略

今回は何回かに分けて飼料稲・飼料米の解説をします。なお、ここでいう「家畜」とは牛を指すとお考え下さい。まずは、概略を説明します。(1)飼料の分類 家畜の飼料は大きく粗飼料と濃厚飼料に分かれます。 粗飼料とは、わかりやすく言うと「草」です。一方…

耕作放棄地 その4

私見ですが、耕作放棄地の管理は2つに分けられます。「いずれ農地に戻すことを前提とする」場合と、「農地に戻さない」場合です。この2つの場合について説明します。東大の研究者に「両者は厳密には区別できない。両立は可能だ」と指摘されましたが、便宜上…

耕作放棄地 その3

(2)復元 既に放棄されている農地を復元し、農業活動を再開することについて考えてみましょう。 基本的には、既に述べた耕作放棄地防止策と同じです。何らかの形で栽培を行うことで農地として維持していくことを目指します。 ただし、農地が一度放棄された…

耕作放棄地 その2

先週後半は日本農業経営学会に参加していたので更新ができませんでした。今回は耕作放棄地の対策を考えます。(1)防止 当たり前ですが、耕作放棄地ができないようにすることです。何らかの形で農業を行い、農地として維持していくのが理想です。 (1-1)集…

耕作放棄地 その1

現在の日本の農業を語る上で避けて通れないのが耕作放棄地の問題です。 厳密な定義が難しいので正確な面積はわかりませんが、すでに40万haを超え、埼玉県全体より大きいとされています。1.なぜ耕作放棄地が発生するのか 理由は簡単です。農業を続けることが…

無農薬を批判する その2

今回は前回とは少し傾向を変えます。 「販売用の作物に農薬を使っている農家でも、自家消費用の作物には農薬を使わない」というよくある言説(都市伝説とも言えますが)を考えてみます。まずは、「自家消費用の作物」の定義を考えます。考えられるのは次のよ…

無農薬を批判する その1

農業の世界のトンデモと言えば、「無農薬」「無肥料」「EM菌」などが有名です。 今回は無農薬を考えてみます。結論から言うと、「無農薬」は原理的には可能です。ただしそれには、以下の全てがそろうことが必須です。(1)資金・人手 農薬なしで雑草や害虫・…

米のとぎ汁腐敗液の恐怖

幸いなことに、「米のとぎ汁発酵液」はネット内で広まっているだけで、実践している人はそれほど多くないようです。 やはり、いかにも怪しいことと、失敗する確率が高いからでしょうね。さらに、テレビや雑誌などのマスメディアが取り上げていないことも大き…

人間は雑食動物です その3

(6)日本人は肉を食べなかったのか 日本各地の遺跡で様々な種類の動物の骨が見つかり、さらに骨には肉をそぎ落とした痕跡がよくあるそうです。また江戸時代の大名屋敷のゴミ捨て場の発掘調査から、武士の間では肉食は珍しいことではなかったということが推…

人間は雑食動物です その2

(3)体のサイズと食性 当然ながら、哺乳類では体が大きくなるほど要求するエネルギーは多くなります。ところが、体重とエネルギー要求量は比例しません。 エネルギー要求量は、体重の3/4乗に比例します。これをクライバーの規則と言います。 具体的に言うと…

人間は雑食動物です その1

マクロビオティック系やベジタリアン系のトンデモさんの中には、「人間はもともと草食動物だ」と主張する人が多いようです。今回は人間が雑食動物であることを明らかにし、その主張を批判的に考察してみます。「草食動物」「雑食動物」というものの定義も難…

燃料か食料か

今回は、バイオエタノールについて語ります。海藻の話はよくわからないので、パスします。農地で作物を栽培し、発酵させてアルコール(エタノール)を取り出して燃料として利用するものです。エタノールを燃焼させた際に発生する二酸化炭素は、元は作物が成…

農業と地球温暖化 その2

今回は畜産とメタンについて述べます。前回述べたように、有機物が還元状態に置かれるとメタン細菌の作用によりメタンが発生します。 農業において水田土壌以外に「有機物」「還元状態」「メタン細菌」という条件がそろうのが、反すう動物の消化管の中です。…

農業と地球温暖化 その1

地球温暖化が事実であるとして意見を述べます。実は農学者にとって、地球温暖化問題はあまり歓迎できるテーマではありません。 農業が大きな原因の一つとして批判されているからです。 昨年秋に北海道大学で作物学会が開催されました。その中で地球温暖化問…

食料自給率 その2

(4)食料自給率は上げた方がいいのか低くてもいいのか これは非常に難しい問題です。そもそも日本の食料自給率が下がったのは、食料を国内で生産するより外国から買った方が安いとか、貿易摩擦解消のために外国から食料を輸入する必要があるなど、経済・政…

食料自給率 その1

最近よく話題になる食料自給率について、個人的な意見を述べます。(1)食料自給率って何? 国内で消費された食料のうち、国内で生産された物の割合を示します。 毎年多少の変動はありますが、最近ではカロリーベースで約40%、金額ベースで約65%です。この…