バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

人間は雑食動物です その2

(3)体のサイズと食性
当然ながら、哺乳類では体が大きくなるほど要求するエネルギーは多くなります。ところが、体重とエネルギー要求量は比例しません。
エネルギー要求量は、体重の3/4乗に比例します。これをクライバーの規則と言います。
具体的に言うと、体重が10000(10の4乗)倍になると、必要なエネルギーは1000(10の3乗)倍に、体重が16(2の4乗)倍になると必要なエネルギーは8(2の3乗)倍になります。
つまり、体重が大きくなると体重当たりのエネルギー要求量が少なくなります。そのため、体が大きくなると質の低い餌でも生きていけるようになります。
近縁種間で比べると、体が大きくなるほど質の低い餌を求め、体が小さくなるほど質の高い餌を求めます。これをジャーマン・ベルの原理と呼びます。簡単に言うと、体が大きくなると草食性が強くなり、体が小さくなると肉食性が強くなります。この原理は霊長類でも大体当てはまることが確認されています(当てはまらないと主張する研究者もいますが)。
人間の体重はチンパンジーとゴリラの間で、チンパンジーよりやや大きいので、食性もチンパンジーに近いものと考えられます。つまり、雑食性です。

(4)歯
「人間では犬歯(牙)が退化しているので肉食ではない」と主張する人もいますが、これは誤りです。肉食動物の犬歯の役割は、狩猟の際の獲物の殺傷と喧嘩の際の威嚇です。肉を切り刻むのはそれほど重要ではありません。チンパンジーやゴリラでは、オス同士の喧嘩の際にお互い牙を剥き出しにして威嚇します。そのためオスの方が犬歯が発達しています。その名残で、人間でも男の方が犬歯がわずかに大きいそうです。
人間は武器を使って狩猟を行い、またオス同士で喧嘩することがないので、犬歯が退化しました。
それでも人間は肉食を維持できました。大きな犬歯は必要がなかったのです。

(5)脳の大型化
人間の脳が大きくなり始めた時期と、肉食を始めた時期は大体一致しているようです。
脳は膨大なエネルギーを消費するので、大きな脳を維持するには質の高い餌が必要となります。肉が最適だったのです。肉を食べたからこそ脳が大きくなったのです。
肉を食べて脳が大きくなって知能が上がり、狩猟の技術が上がったので肉を食べる量が増えてまた脳が大きくなる……といった正のフィードバックが起こったものと考えられます。
「人間は爪や牙を持たないので狩猟に向かない。よって人間は肉食に向かない」という主張も誤りです。初期の人間は死肉漁りをしていたと考えられています。これならば爪や牙は不要です。
肉食動物に獲物を横取りされるのを防ぐには、獲物を素早く解体して肉を持ち去る必要があります。そのために石器が発達したようです。また、石器があれば骨を割って栄養価の高い骨髄を入手できます。このように、肉食が石器製作の発達を促したと考えられています。

(6)目
肉食動物では顔の正面に2つの目が正面を向く形で付いています。これにより、左右の眼の視野が重なり、立体視ができます。この立体視は肉食動物として必須の能力です。獲物の位置を正確に把握して捕獲することができます。
一方、草食動物では2つの目は顔の左右両側に付いています。このため、左右の眼の視野が重ならず、立体視はできませんが、視野が広くなるため敵の接近をいち早く察知することができます。
人間の目は肉食動物型の配置となっています。霊長類が昆虫を主食としていたころの名残でしょう。


次回でこの話は最後にします。