バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

耕作放棄地 その1

現在の日本の農業を語る上で避けて通れないのが耕作放棄地の問題です。
厳密な定義が難しいので正確な面積はわかりませんが、すでに40万haを超え、埼玉県全体より大きいとされています。

1.なぜ耕作放棄地が発生するのか
理由は簡単です。農業を続けることが難しくなったからです。経営状態の悪化、労働力不足などにより、栽培が行えなくなった農地から放棄されます。農地は法律により他の目的での利用が制限されていることもあり、そのまま放置されます。
耕作放棄地が増えているということは、日本の農業が衰退しているということです。

2.どんな農地が放棄されるか
簡単に言ってしまえば、条件の悪い農地から放棄されます。この場合の「条件が悪い」とは、狭い、急斜面、土壌がやせている、水の便が悪い、日当たりが悪いなどです。条件のいい農地は農家が最後まで守ろうとします。

3.どんな問題が起こるか
(1)害虫や雑草、病原体の発生源、野生動物の住みかになる
特にまずいのが、野生動物の問題です。日本の環境では耕作放棄地は2・3年で草ぼうぼうになり、5年もすれば低木が生えてきて非常に見通しが悪くなり、イノシシやサル、シカなどの住みかになってしまいます。動物愛護の観点から野生動物を駆除するのが難しくなっていることもあり、全国的に野生動物による農作物の被害(鳥獣害)は深刻化しています。せっかく育てた作物を野生動物に食べられてしまうので、地域によっては鳥獣害のために農家のモチベーションがどんどん下がりつつあり、耕作放棄地が増える原因となっています。酷い悪循環です。
(2)景観の悪化
耕作放棄地は整然とした美しい田園風景とは全く別物で、あまり見た目が良くありません。20年か30年も経てば少しは見栄えのする森林になりますが、それまで放置するのはちょっとまずいかと思います。
(3)生物多様性が維持できない
耕作放棄地をよく見ると、帰化植物が非常に多いことがわかります。秋の中旬になると、日本中の空き地が鮮やかな黄色に染まります。これは、北米原産で帰化植物の代表格のセイタカアワダチソウの花です。帰化植物が多いということは、植物の多様性が低いことを意味します。在来の植物が少ないため、帰化植物が定着できる余地が大きいのです。
動物でも植物でも、現在絶滅が心配されている生物は意外に草原性の種が多いのが特徴です。日本は気温と降水量に恵まれているため、国土はほぼ森林となり、天然の草原はほとんど存在しません。そのため、数少ない草原性の生物の多くは、農業により維持されている草原に生息しています。日本の環境では、草原は人間の手で管理しないとすぐに森林になってしまいます。草原性の生物を保護するためには、農業を続けなければなりません。
参考 独立行政法人 農業環境技術研究所
農業が育むもう一つの自然 「茶草場の生物多様性」

次回は具体的な耕作放棄地対策について説明します。