バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

無農薬を批判する その1

農業の世界のトンデモと言えば、「無農薬」「無肥料」「EM菌」などが有名です。
今回は無農薬を考えてみます。

結論から言うと、「無農薬」は原理的には可能です。ただしそれには、以下の全てがそろうことが必須です。

(1)資金・人手
農薬なしで雑草や害虫・病気を防ぐには様々な資材や器具を投入するか、人海戦術しかありません。資材としては、以下のような物があります。

○マルチというシートを地面に敷いて雑草を防ぐ。マルチには紙製の物やプラスティック製の物があります。あるいは、生育が旺盛な牧草やオオムギを作物の間に植えて雑草を防ぐリビングマルチという方法もあります。枯れた草はそのまま有機肥料として土壌に鋤き込まれます。
○ネットを張って鳥獣害を防ぐ(美味しんぼに出ました)。
○天敵や菌類など。これは生物農薬と呼ばれ、市販されています。
○米のとぎ汁や木酢液、薄めた牛乳、薄めた蜂蜜など。つまり、「農薬」として法律で認められていない物を使うということです。かなり胡散臭い物が多いのが特徴です。これを「無農薬」と称していいのでしょうか。

器具には次のような物があります。
○除草専用の回転ノコギリ・石油バーナー(通販でありますね)
○トラクターなどに取り付ける除草専用のアタッチメント

いずれの手段を用いるにせよ、農薬を使うより確実に費用がかかります。
さらに、農薬を使わないと作物の収穫量・品質共に低下して収入が減るのは避けられないので、資金力がないと経営を維持できません。

(2)固定客
無農薬では作物の収穫量・品質共に低下しますが、「無農薬」という付加価値をうまくアピールし、顧客を確保できれば経営は成立します。

(3)周辺農家の理解
無農薬農家の農地は確実に雑草・害虫・病気の発生源になります。そのため、周辺農家に嫌われます。
「奇跡のりんご」で有名な木村秋則氏は著書の中で、「害虫が自分の農地から周辺農地に移動するのではなく、逆に自分の農地に周辺農地の農薬から逃れて来る」と言い訳していますが、これでは自分の農地が害虫の逃げ場、発生源になっていることを認めているようなものです。もっとマシな言い訳を思い付かないものでしょうか。

今回の記事を書くにあたり、日本植物防疫協会発行の「病害虫と雑草による農作物の損失」という冊子を参考にしています。
http://www.jppa.or.jp/shuppan/book_info-byougaityu.html
この中で、無農薬栽培を行った場合の作物別の収穫量や出荷額の減少率が掲載されています。
全体的に損害は収穫量より出荷額の方が大きくなっています。収穫できても傷や虫食いの跡があって売り物にならない作物が出るでしょうから当然ですね。リンゴでは出荷額はほぼゼロになるようです。木村氏の「完全無農薬のリンゴ」なるものはどこまで本当なのか疑わしくなりますね。