バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

人間は雑食動物です その3

(6)日本人は肉を食べなかったのか
日本各地の遺跡で様々な種類の動物の骨が見つかり、さらに骨には肉をそぎ落とした痕跡がよくあるそうです。また江戸時代の大名屋敷のゴミ捨て場の発掘調査から、武士の間では肉食は珍しいことではなかったということが推測されています。
桓武天皇が675年に肉食禁止令を出したため、日本では肉食はほとんど行われなかったとよく言われますが、桓武天皇は4月から9月の間の肉食を禁じただけのようです。それ以外の時期はお咎めなしでした。それ以降、僧侶や貴族の間では肉食禁止は広まりましたが、武士や庶民はあまり気にせず肉を食べたようです。時代が下がると、江戸時代には都市部に動物の肉を売る店がありました。農作業に用いることから牛や馬を食べることはなかったものの、豚や野生動物の肉は珍しい食べ物ではなかったようです。

(7)参考文献
山極寿一 ゴリラ 東京大学出版会
       暴力はどこからきたか NHKブックス
       人類進化論 霊長類学からの展開 裳華房
       サルはなにを食べてヒトになったか 女子栄養大学出版部   
高槻成紀 哺乳類の生物学 5 生態 東京大学出版会
西田利貞 新・動物の「食」に学ぶ 京都大学学術出版会
河合信和 人類進化99の謎 文春新書
       ヒトの進化 700万年史 文春新書
三井 誠 人類進化の700万年 講談社現代新書
溝口優司 アフリカで誕生した人類が日本人になるまで ソフトバンク新書
京都大学霊長類研究所 新しい霊長類学 講談社ブルーバックス
中村美知夫 チンパンジー 中公新書
松井 章 環境考古学への招待 岩波新書
真家和生 自然人類学入門―ヒトらしさの原点 技報堂出版
片山一道他 人間史をたどる―自然人類学入門 朝倉書店
大塚柳太郎他 人類生態学 東京大学出版会

(8)雑感
欧米人は日本人の2・3倍の畜産物を摂取しています。さらに、1.5倍のカロリーを摂取しています(農水省 食料需給表)。人間は本来動物性食品も食べる雑食動物だと主張しましたが、これはいくら何でも畜産物の食べ過ぎです。健康に悪影響が出てもおかしくありません。

食料問題という点からみると、よく言われるように畜産物はエネルギー生産効率が非常に悪いです。どういう計算をしているのか気になりますが、畜産物1kgを生産するのに餌の穀物が5-10kg必要だとされています。世界中の人間が全員ベジタリアンになり、なおかつ公平に食料が分配されれば、世界から飢えに苦しむ人間がいなくなるとも言われています。

環境問題の面でも、畜産業は分が悪いです。家畜の放牧のために発展途上国(特に南米やアフリカ)で森林や草原の破壊が進んでいます。先日(7/16)書いたように、畜産業からは膨大なメタンが発生します。また集約的な畜産が行われている先進国では、家畜の排せつ物が地下水や河川を汚染しています。特にオランダでは深刻です。

以上のような状況から、今後、世界的に畜産業が縮小し、畜産物摂取量も減少することは避けられないと私は考えています。

だからといって、菜食主義を擁護する気にはなりません。何事も程々が一番です。現代の標準的な日本人の畜産物摂取量ならば問題はないと思います。現代の日本人が世界で一番健康で長生きであることは既に明らかです。肉も乳製品も含めて何でもバランス良く食べればいいのです。人間は雑食動物なのですから、いくら言い訳したところで菜食主義は栄養学的には「偏食」です。特に、成長期の子供に強要するのは問題があります。