バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

農業と地球温暖化 その2

今回は畜産とメタンについて述べます。

前回述べたように、有機物が還元状態に置かれるとメタン細菌の作用によりメタンが発生します。
農業において水田土壌以外に「有機物」「還元状態」「メタン細菌」という条件がそろうのが、反すう動物の消化管の中です。動物のゲップという形でメタンが大気中に放出されます。

反すう動物は餌を噛んで飲み込み、胃で消化した食べ物を口に戻し、再度噛んで飲み込む。これを繰り返します。さらに何と胃が4つあり、胃の中では微生物が大量に生息しております。微生物は餌を消化吸収し、増殖します。増殖した微生物は胃から腸に流され、腸で動物自身による消化吸収を受けます。つまり、反すう動物は餌を直接利用せずに、消化管内にいる微生物を通して間接的に利用していることになります。
なぜこんな面倒なことをするのかというと、反すう動物の餌である草は消化率や栄養価が低く、動物自身の力では利用できないためです。

そして消化管内に生息するメタン細菌が、餌からメタンを発生させてしまうのです。
ならば抗生物質などでメタン細菌を殺せばいいのかというと、メタン細菌だけを殺す物質なんておそらく存在しないでしょうし、消化管内でメタン細菌は色々な役割を果たしていると考えられているので、メタン細菌を殺せば動物に何らかの障害が出る可能性があります。よって、メタン細菌を殺すことでメタン発生量を減らすのは現実的ではありません。

他には、餌を変えることでメタン発生量を減らせないかという考え方もあります。
家畜の餌は大きく2種類に分けられます。
(1)粗飼料
牧草や稲わらなど。栄養価や消化率が低く、メタン発生量が多い。
(2)濃厚飼料
穀物(ほとんどトウモロコシ)や大豆など。栄養価や消化率が高く、メタン発生量が少ない。

これだけ見ると、餌を全て濃厚飼料に切り替えればいいではないかと思われます。
しかし、反すう動物の本来の餌は粗飼料であり、濃厚飼料を過剰に与えると障害が出ます。どうしても粗飼料は与えなければなりません。
それに、反すう家畜の本来の役割は、「人間が利用できない草を乳や肉に変える」ことです。人間の食べ物となる穀物ばかり与えるのは問題があります。

米ぬかやビール粕、おからのような脂肪分の多い食品廃棄物を加えることでメタン発生量を減らすことはできるようですが、コストの問題もあってなかなか難しいようです。

また、通常家畜の排せつ物は堆肥として利用されますが、堆肥化の過程でもメタンが発生してしまいます。さらに、重量当たりの温室効果二酸化炭素の300倍とも言われる亜酸化窒素(N2O)も発生するとされています。

地球温暖化問題に関する限り、畜産業は肩身が狭い思いをしております。