昨日(3/20)、玉川大学にて開催された、日本農薬学会第40回大会に参加しました。目的は、同大学ミツバチ科学研究センター所属の中村純教授によるネオニコチノイド系農薬の規制に関する講演です。非常に重要な内容だと思いますので、レビュー記事を書く次第です。
東京都と神奈川県の間で帰属を巡って紛争が絶えないとの噂がある地、町田市。
この大学はミツバチの研究に関して日本一です。今回の講演の会場としては最適でしょう。
日本全国から農薬メーカーと農水省の御用学者が集結する呪われた学会です(大嘘)。
発表の内容を私が勝手にまとめると、以下のようになります。
- ミツバチの農薬に起因すると考えられる異常は最近初めて起こったことではない。数十年前から断続的に起こっている。
- 送粉者(花粉媒介者)としての能力はミツバチより野生のハナバチ類の方が重要であり、野生のハナバチが減少している。
- 野生のハナバチには農地周辺の餌場(蜜と花粉の供給源であるお花畑)と営巣場所(むき出しの土の地面)が必要であり、農地とその周辺の開発の影響が大きい。
- 農地周辺のお花畑が減少したことでミツバチの農地への依存が強まり、農薬の影響を受けるようになった。
- 世界的にミツバチは増加し続けている。ミツバチの個体数に決定的な影響を及ぼすのは養蜂業の動向である。先進国では養蜂が衰退している。
- ミツバチの異常の原因で大きいのは病気・害虫・餌場不足による栄養状態の悪化である。
- ミツバチは独自の基準で花を選んでおり、ただ植物が生えていればいい、ただ花が咲いていればいい、というものではない。
- ミツバチは強い社会性を有する生物であり、実験室で数個体を隔離して行った毒性試験では強いストレス状態にある。野外試験では室内実験と同様の結果が出ない。
- ネオニコチノイド系農薬が原因だとされる被害の報告はあるが、他の農薬でも同様の報告はあり、毒性が強いとは言えない。
- 現状の蜜や花粉中のネオニコチノイド系農薬濃度はミツバチに影響が出る水準ではない。
- ミツバチの個体の大半は何もしておらず、働く個体に異常が生じれば余剰個体が埋め合わせるので、巣全体としては、多少の個体数の減少では影響を受けない。
- EUでは世論に押されてネオニコチノイド系農薬の使用を規制しているが、ミツバチの状況は好転していない。また、優れた農薬であるネオニコチノイド系農薬に代わる農薬や農薬以外の手段を考えなかったため、農業生産に悪影響が出ている。
- オーストラリアではネオニコチノイド系農薬を規制していないが、ミツバチへの影響はない。
- Science誌は商業誌なので、質が低くても話題になりそうな論文を掲載する傾向がある。つまり、世論に便乗している。
- ネオニコチノイド系農薬について騒いでいるのは環境保護団体、反農薬団体、マスメディアのみである。科学に基づく議論が欠けている。ミツバチがシンボルとして祭り上げられているに過ぎない。ミツバチを守ることではなく、農薬を規制することが目的となっており、本末転倒である。
- ミツバチの減少の大きな原因は近代化された養蜂業の問題である。
- 上記の餌場の減少による栄養状態の低下(病気や害虫への抵抗力の低下にもつながる)。
- 選抜による遺伝的多様性の低下(環境が変化すると総崩れになる)。
- 巣間の競合(地域内の過密飼育)。
- 巣の衛生状態の悪化による病気や害虫、ストレスの増加(巣内の過密飼育・巣の使い回し)。
- 養蜂は一種の畜産なので、畜産同様に管理技術を向上させるべき(補助的な餌の給与・薬剤の使用)。
- ミツバチの減少を食い止める対策は、農薬の規制より農地周辺部にお花畑を増やすことが重要。
- ミツバチの健康状態が改善され、個体数も増加する。
- ミツバチが農地に依存しなくなり、農薬の影響が減る。
- ミツバチ以外のハナバチにも好影響が出る。
- 送粉者の増加により受粉効率が良くなり、農業生産に好影響が出る。
- 耕作放棄地の維持(農地復元の可能性を残す)。
- 景観の向上。
以上をまとめると、
ネオニコチノイド系農薬はミツバチの減少と全く無関係ではないが、農業全体、養蜂業全体の問題こそが大きな原因である。偏った不正確な情報に惑わされないように用心すべき。
となりましょうか。「デマを流して恐怖を煽る連中にはご用心」とは様々な分野に当てはまります。そもそもこの問題に関して騒いでいる連中は、食の安全やワクチンの安全性、被曝の危険性などの問題でもよく見掛ける面々ですね。