「サイエンスバスツアーin福島」参加レポート
昨日(11月2日)、東京大学大学院農学生命科学研究科 食の安全研究センター主催の、「サイエンスバスツアーin福島」に参加しました。その様子を報告します。
1.写真
集合場所の、御用学者と東大話法の総本山、東京大学です。集合時間が朝6時50分というのがなかなかつらいところでした。
学会やらシンポジウムがよく開催される弥生講堂です。私は毎月1回ぐらい訪れています。
最高学府はギンナンの悪臭が漂います。
バス
最初の目的地、福島県農業総合センターです。
原発事故からの復旧技術に関する展示が行われています。
食品の放射性物質測定に関して、同センター安全農業推進部部長より説明を受けます。測定室は部外者の立ち入りが厳禁なので、説明は廊下で行われました。
分析前の試料調整です。「マリネリ容器」でどこかの常春の国を想像してしまいました。この部分はあとで詳しく説明します。
測定です。計10台あるこの測定器は外部からの放射線を遮断するために鉛を大量に用いており、重量が1.5トンもあるそうです。そのためにこの部屋は床を補強しているとのことです。部屋の中には入れないので廊下から撮影しています。
昼食です。JA直営の焼き肉レストランです。なかなかに米も肉も美味でした。
地元テレビ局の取材を受けました。私は撮影されていませんが。
レストランに隣接する売店です。地元の農産物を売っていました。私もささやかながら購入しました。独身独居ですので量を買えないのが残念です。
一番楽しみにしていた牛農家の見学です。農学部で畜産を専攻していた私は、牛舎の臭いを嗅ぐと異常にテンションが上がります。
牛を間近で見たことがない方は想像が難しいと思いますが、牛は本当に大きな動物です。こちらの農家では出荷時の体重は800㎏ほどだそうです。
2.説明
(1)放射性物質の測定
前述の福島県農業総合センターの担当者の説明は非常に謙虚かつ誠実でした。要約すると以下の通りです
全体について
- 測定結果には農家の生活がかかっている。そのため、測定ミスが起こらないよう用心している。
- 正確に測定するため、測定室は高度な空調設備が整備されている。そのための初期費用と光熱費が大きな負担となっている。
- 特に気を付けているのが、器具の使い回し、洗浄の不備による汚染(混入)である。
- 器具は極力使い捨てにしている。そのために資材購入費が増大している。
- 器具は専用の特殊なものが多いので、高価である。参考:株式会社スギヤマゲン、関谷理化株式会社
- 分析点数を増やすため、月曜日から土曜日の朝8時から夜9時まで分析を行っている。そのために人件費が増大している。
- 汚染を防ぐために、前処理担当と分析担当の職員を分けている。
測定の前処理について
- 市販のカッターの刃で細かく刻み、専用の容器に詰める。
- 手作業で行っている。そのため非常に時間が掛かる。
- フードプロセッサーですり潰せば時間を短縮できるが、作業の度に機械を洗浄して汚染がないか確認すると逆に時間が掛かる。
測定について
- 1回の測定の時間を長くし、さらに1回測定量を増やせば(大きな容器を使い、多くの試料を測定する)、測定の精度は上がる(検出限界値が下がる)。しかし、そうすると分析できる点数が減るので、非効率である。
- 基準値を超える農産物は確実に減少している。
方針について
- 現在の基準値が本当に安全かどうかは誰にもわからない。我々にできることは、できるだけ正確な数値を提示し、判断材料を提供することである。基準値以下の農産物を食べるかどうかは各自が決めるべきことだ。食べない自由もある。
(2)総括
食の安全研究センター長の関崎勉教授のお話が最後にありました。勝手にまとめると次のような内容です。
関係者の努力により、福島県の農産物の放射能汚染は確実に減少している。現在の基準値は国際的に見て十分に厳しい。「食べて応援」は重要だが、そろそろ終わらせるべきだ。福島県の農産物を特別扱いするのを止め、原発事故前と同様に他県の農産物と競争させるべきだ。そのために我々はこれからも積極的に情報発信を行う。
私も同意します。
3.ネガティブなおわりに
このバスツアーは非常に快適でした。極端な「脱被曝」の参加者が一人もいなかったからです。「脱被曝」の方々が福島を訪れるはずがありませんから当然と言えます。
私にとってこのツアーは非常に有意義であり、またこのような機会があればぜひ参加したいと思っています。しかし、『「放射脳」の方々には「御用学者による洗脳バスツアー」に見えるのだろうな』と考えて、一人で勝手に苦い顔をしております。聞く耳を持たない人々に話を聞かせるにはどうすればいいのでしょうか。私にはわかりません。
4.おまけ
真面目な話ばかりするのは性に合わないので、ネタを少々。
牛のうんこ(これを見るために参加したようなものです)。直前に牛舎の掃除をしたようで、うんこがほとんど落ちていなかったのが残念でした。一応は配慮して小さい写真で。物好きな方はクリックして下さい。気分を害しても私は責任を負えません。
東大のシンボル、安田講堂と赤門。暗いことと小雨が降っていたことと腕が悪いこととデジカメが安物であることが相まってわかりにくくなっておりますが。
あの安田講堂は東大のシムボルだ! 明治以来百年も続く立身出世主義のシムボルだ!
正に日本という国の愚劣さを象徴するものだ!(from 野望の王国)
このネタのためだけに安田講堂を撮影しました。本当は朝の集合前に撮影したかったのですが、安田講堂と農学部は離れているので時間がなく、解散後の夜にしか撮影できなかったのです。しかも改修中だったのか、あまり近寄れませんでした。
「野望の王国」の原作者である雁屋哲氏も「美味しんぼ」で下らないヨタ話を描く暇があるならばこのツアーに参加すればよかったのに、と思います。