バッタもん日記

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オランダ農業が日本農業の参考にならない理由 補足

先日の記事では、オランダでは農産物の輸出の際に陸路が利用できるので、海路や空路しか利用できない日本ではオランダの真似はできないと述べました。ここがやや伝わりにくかったようですので、陸路の優位性を簡単に述べておきます。

時間のロスがない

前回述べたように、野菜や果物、花などの園芸作物では、鮮度が商品価値に決定的な影響を及ぼしますので、輸送時間は重大な条件です。
陸路の場合は、トラックで輸送することになります。農家と小売店の契約形態にもよりますが、基本的には農地から小売店までの直行便です。時間のロスはありません。
一方の海路や空路では、船舶や航空機の便の発着時間に拘束されます。海港や空港で待たされるということです。トラックならば一日中出せますが、船舶や航空機ではそうはいきません。さらに、直行便がなくどこかを経由する場合にはこの待ち時間がさらに延びます。

積み替えの回数が少ない

忘れてはいけないことは、農産物は衝撃に弱い生ものだということです。イチゴや桃を想像すればよくわかると思います。陸路が海路や空路に比べて有利となる理由は時間だけではありません。輸送や積み替えの際の衝撃により農産物の品質が低下し、商品価値が低下してしまうのです。つまり、積み替えの回数は極力少ない方がいいのです。農産物の輸出を簡単なフローチャートにしてみましょう。

積み替えの回数が少ないことで、陸路では農産物が衝撃を受ける回数が少ないことがよくわかると思います。
また、トラックや船舶、航空機が保冷設備を有していても、積み替えの際に温度が上がり、鮮度が低下することは避けられません。輸送の際の積み替えの回数は、輸送時間と同様に重大な問題です。


前回からの繰り返しになりますが、日本は農産物の輸出に向いていない国です。日本国内の農産物市場の縮小が明らかとなっている以上、海外への輸出に注目せざるを得ないのは当然です。さりとて、輸出への過度の期待は禁物です。


参考資料
輸送中の果実の傷みを大幅に軽減できるイチゴ包装容器(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
モモ輸出における輸送中の衝撃の発生程度と果実の荷傷み防止方法(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構)
平成20年度農林水産物貿易円滑化推進事業 生鮮農林水産物・食品の航空輸出促進に関する調査報告書(農水省)
農林水産物・食品の輸出に係る物流検討会 課題と対応(農水省)
農林水産物・食品輸出の物流に係る課題と現状の補足(農水省)