バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

比嘉照夫の大嘘理論 「抗酸化作用」

相変わらずEMの猛威が吹き荒れています。
親玉の比嘉照夫の言っていることは科学的にデタラメだらけですが、全てを批判することは私の手に余りますので、手に負える部分だけ少し批判してみます。

比嘉によると、EMの作用の特徴は「抗酸化作用」にあるそうです。

EMの本質的な力は、抗酸化作用と非イオン化作用と、すべての有害なエネルギーを無害化したり、有用化する3次元の触媒的機能を持つ波動の3点セットのシントロピー(蘇生)力によるものです。
EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる[64] EMフォーラム2012より)

私にはこの文章の意味がさっぱりわかりません。理解しようと努力するだけ時間の無駄でしょう。恐らく書いている本人も理解できていないと思います。
ただし、見逃せない点が一つあります。「抗酸化作用」という言葉です。

この「抗酸化作用」はEMの大きな売りとなっており、関連商品の説明には必ず出て来ます。〔EMが持つ抗酸化の力(EM珪藻土)開発ストーリー(EM・X GOLD公式サイト)

そして、EMは河川や海洋の水質浄化や家畜排泄物の堆肥化に有効であるとされています。
EM情報室 WEBマガジン エコピュア 連載 新・夢に生きる[50]EM使い方ガイド

「水質浄化」と「堆肥化」の話で、「抗酸化作用」などという言葉が出て来た時点で、この男には科学知識がないと断言できます。それはなぜか。

まず、「抗酸化作用」という言葉の意味を考えてみましょう。
簡単に言ってしまえば、「酸素が他の物質と反応するのを防ぐ」働きです。つまり、EMの周辺では酸素が使えなくなるわけです。これは大問題です。
微生物を用いて「水質浄化」と「堆肥化」を行う場合、酸素は必要不可欠です。と言うのは、この時に働く微生物は主として「好気性(酸素を好む)」の微生物であり、酸素がなければうまく働かないからです。
論より証拠、酸素が必要であることを示す資料を挙げましょう。

資料1 独立行政法人家畜改良センター十勝牧場
「十勝牧場では,馬・肉用牛・乳牛・めん羊のフンや敷料を切り返しと撹拌によって好気的発酵処理を行い」
「切返し作業の主な目的は、好気性微生物の活動に必要な酸素を供給することです」

資料2 大阪府堺市場下水道局
「最初沈殿池を通った下水は、曝気槽で活性汚泥と言われる微生物のたくさん集まっている泥と、空気を吹き込みかき混ぜられます」

資料3 香川県環境管理課・香川県環境保健研究センター
「水深数m以下は無酸素状態であった」
「悪臭は、底層の酸素が消失し、嫌気的条件となり、硫化水素が発生したのが原因」
「好気性バクテリアによる堆積有機物の酸化及び分解」
「エアレーション」
「底層無酸素状態の解消」

資料4 立正大学地球環境科学部 千賀有希子・渡辺泰徳
「長期にわたる無酸素化は、好気性有機物分解が十分に進行せず、未分解の有機物が蓄積し水質を著しく悪化させる」
「酸素を貧酸素水へ供給する方法は水質改善に向けた技術開発の1つであり」

資料5 国土交通省相模川水系広域ダム管理事務所
『水質改善のために、水の中に空気を吹き込んで、湖内の水の循環を促進し、「嫌気性細菌」の発生を抑制する曝気施設を設け、酸素を必要とする「好気性細菌」による水質の浄化機能を保つ工夫をしています』

そもそも、水中の酸素濃度(溶存酸素量)は水質の指標とされているぐらいです。当然、この数値は高いほど水質が良好であることを示します。
水質浄化でも堆肥化でも酸素は必要不可欠であり、「抗酸化作用」など全くの論外であることは明らかです。

比嘉の主張する通り「抗酸化作用」が本当ならば、EMは水質浄化や堆肥化には使えません。むしろ、好気性微生物の活動を阻害してしまうので有害です。
逆に、EMが水質浄化や堆肥化に使えるならば、「抗酸化作用」は誤っていることになります。
どちらにしても比嘉は嘘つきです。
この男は本当に農学博士で大学の名誉教授なのでしょうか。今回の話は高校レベルの生物学を修めていれば十分に理解できる内容なのですが。

結局、疑似科学から身を守るには勉強するしかないということです。


10/18 追記
下記のはてなブックマークコメントにもあるように、この男は「抗酸化作用」という科学用語を独自の意味で用いています。ますますもって嘘つきです。
科学用語を独自のおかしな意味で用いる、あるいは独自の用語を作りだすのはインチキ科学者の典型ですね。
背景には、「酸化」=「腐敗」=「悪」、「抗酸化(還元)」=「発酵」=「善」という短絡的な偏見があるのでしょう。「発酵」と「腐敗」の違いは産物や過程が人間の役に立つかどうかでしかなく(少々乱暴な表現ですが)、酸化作用か還元作用かは関係がありません。