バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

腐った米のとぎ汁教祖の大放談 その2

前回に引き続き、飯山一郎という人物のインタビュー記事が雑誌に掲載されましたので、紹介します。

1.はじめに
この人物は、「腐った豆乳や腐った米のとぎ汁を散布すれば放射能が消える」「腐った豆乳や腐った米のとぎ汁を飲んだり吸い込んだりすれば免疫が強化されて放射能の害がなくなる」という、常軌を逸した主張を行っています。当然ながら、科学的根拠など何一つ提示しておらず、ただのヨタ話に過ぎません。つまり、完全なホラ吹き爺さんです。まともに取り上げる価値もない、検証する価値もない人物です。

2.雑誌について
今回の2回に渡るインタビュー記事を掲載したのは、「スターピープル」というスピリチュアル雑誌です。リンク先をご覧頂ければわかるとおり、妄想全開の完全なオカルト雑誌です。このような雑誌に記事を掲載するということは、自らの主張が科学ではなくオカルトであると認めているも同然です。こんな記事には何の意味もありません。こんな雑誌ならば取り上げられない方がマシですが、本人にとってはこの雑誌を選んだ理由があるようです。これは後述します。

3.内容の検証
今回は前回に比べて、全体的に随分と誇大妄想が目立っています。問題点を指摘していきます。

私のサイトでは、安全な産直の食材を扱っています。玄米、水、大豆、茶、漬物、豆乳ヨーグルトを作るための大豆まるごと飲料「ミラクル大豆」などです。

これは間接的に「自分の商品は放射能に効く」と宣伝しているわけですよね。しかし、本人は常に薬事法を念頭に置いており、直接の宣伝を行わないよう用心しています。ホラ吹きの割には慎重な人物です。
参考1
参考2
参考3

被災者の疎開先として多くの人たちが住める場所を作ろうと思い、それを中国に作っているところです。

情報統制のため中国の実情はどうなっているのかよくわかりませんが、この主張が絵空事であることは政治・経済に無知な私にもわかります。
様々な事情はあるかと思いますが、中国の日本に対する感情は必ずしもいいとは言えず、国家(共産党政権)、地方政府、国民が数万人数十万人単位の日本人を受け入れるわけがありません。ただでさえ中国は人口過剰、経済格差、食糧不足、環境破壊、政治の腐敗などの膨大な問題を抱えています。国自体が常に不安定です。日本人の大量移民など受け入れるはずがありません。昨年よりあれだけ反日暴動が起こっているというのに、この爺さんの頭の中の「中国」とは一体どこの国なのでしょうか。

ヒーラーの友人もたくさんいますから、彼らの人を癒すという心の優しさ、熱意、これに私も強く影響を受けているんです。そういう意味でも、スピリチュアル関係の媒体の存在価値は大きいですね。

放射能の恐怖に怯える人々を癒したいからこのスピリチュアル雑誌を選んだと言いたいようです。確かにこの人物の景気のいいホラ話に癒されている方々はいるようです。本人は悩める人々を救うために真実を述べているつもりかも知れませんが、客観的にはただのヨタ話に過ぎません。こんな雑誌しか相手にしてくれるメディアがないという厳然たる事実から目を逸らしていますね

現実には放射性障害で死者が出始め、火葬場が間に合わないという状態なのに、それを誰も不思議に思わない。

何の根拠もありませんね、非常に悪質なデマと言うべきでしょう。

困っている人を食い物にするような悪どい輩も多いですから。

そのまま自分のことですね。トンデモさんは商売敵である他のトンデモさんを批判することが多いのですが、その批判がそっくり自分に当てはまることに気付いていません。この辺のトンデモさんの言動については、と学会の「トンデモ本の世界」シリーズが参考になります。

(インタビュアー)これからの日本に、明るい未来はあるのでしょうか。
全くないです! 放射能でギトギトなんですから。

これまた何の根拠もありません。恐怖を煽るだけの悪質なデマです。

噴出した放射能は日本国土を汚染して、東北・関東は人間が激減して無人の荒野が広がり、将来は核燃料の捨て場になるでしょう。

上に同じ。

チェルノブイリベラルーシなんて健康な人間がいないんですから。

上に同じ。
チェルノブイリベラルーシ」という表現に違和感を覚えます。チェルノブイリ原発ウクライナにあり、ベラルーシに隣接しているとはいえ別の国ですから。「チェルノブイリ原発事故の影響を受けたベラルーシ」と表現して欲しいところです。言葉の使い方がいい加減です。

私は、乳酸菌によるマクロファージやNK細胞で武装した免疫力のある、人類史上初めての、放射能に負けない強靭な体質の日本人を一人でも多く残したいんです。

飯山氏の持論は、「腐った米のとぎ汁や腐った豆乳を飲んだり吸い込んだりしたら免疫が強化されて放射能の害を受けなくなる」というものです。当然ながら、これは科学的に何の根拠もありません。繰り返しますが、ただのヨタ話です。誇大妄想が全開ですね。

読者からの電話には、病気に関することも多くてね、電話口で泣かれると、これは辛いです。

どこまで本当なのかはわかりませんが、事実だとすれば、放射能の恐怖のあまり精神状態が不安定になっている人々にデマを吹き込んでいるわけですから、悪質な行為と言えましょう。

やがて日本は、乳酸菌発酵共同体という新しい国に生まれ変わるでしょう。
(中略)
すでに強靭な乳酸発酵体質をもった日本人が、世界中の人々に、この乳酸菌で免疫力の高い人間に生まれ変わる方法を教えていく。やがては、世界中が乳酸発酵人類という、全く新しい存在形態としてまとまっていくことになるでしょう。私はそうなることを祈っています。

これまた何ともスケールの大きい誇大妄想です。

4.さらに雑誌について
私は前回も今回も、このインタビュー記事が掲載された雑誌そのものを問題にしました。その理由を述べます。
科学の世界で何か新しいこと、定説に反することを主張する際には、「査読審査を有する学術誌に論文を投稿する」ことが鉄則です。学術誌以外の媒体で発表された情報は意味を持ちません(全く何の価値もないとまでは言いませんが)。科学の世界で評価の対象とはなりません。査読審査という内部チェックを経ていない情報は玉石混交ですので(大多数が石)
飯山氏の主張は科学的に大いに既存の知見に反するにもかかわらず、論文を執筆する様子はありません。このようなオカルト雑誌にヨタ話を吹聴するぐらいが関の山です。科学の土俵に上がっていないので、検証する価値すらありません

また、学術誌ならば何でもいいのかというと、そうでもありません。
インパクト・ファクター」という指標があります。簡単に言うと、学術誌の「格」を表す数値です。この数値が高いほど、よく読まれてよく引用される優れた学術誌だと評価されます。逆にこの数値が低ければ、マイナー誌だと見なされます。「論文至上主義」「インパクト・ファクター至上主義」には問題もありますが、科学の世界では情報を発信する媒体が重要であるとご理解下さい。オカルト雑誌にヨタ話が載ったぐらいでは世界は変わりません

5.最後に
今回のインタビュー記事は前回に比べて誇大妄想が酷く、抽象的な話を繰り返しているのが特徴でした。そのため突っ込みどころに欠けており、読んでいてあまり面白いものではありませんでした。何とも残念です。面白ければいい、というものでもありませんが。
飯山氏は、根拠もなしに放射能に対する恐怖を煽り、同時にその対策として疑似科学を勧めています。典型的な「マッチポンプ」式ですね。
ナノ純銀除染に関する記事でも述べましたが、私は人々の不安に乗じて疑似科学を広めようとする人間を心の底から軽蔑します。