バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

陰謀暇なし みんな陰謀が悪いんや この陰謀が目に入らぬか

講談社現代新書から、面白そうな本が出ました。
世界の陰謀論を読み解く ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ(辻隆太朗)です。

もともとユダヤ陰謀論フリーメーソン陰謀論については、と学会のトンデモ本の世界などでほんの僅かながら知識を得ておりましたが、この一冊で日本に出回る陰謀論は大体網羅できそうです。世界史や宗教の知識もそれほど必要ではないので、読みやすいと思います。また、参考文献も充実しています。

強調されている点は、そもそも「ユダヤ人」や「フリーメーソン」は定義が難しく、さらに決して一枚岩ではないため、一致団結して世界征服に乗り出すことなど不可能であるということです。
陰謀論者はアメリカの独立はフリーメーソンの手により行われたと主張しますが、アメリカ側とイギリス側の双方に少なからずフリーメーソンがいたことを無視しています。イスラエル建国やシオニズムに反対していたユダヤ人も多かったことも無視しています。

身近に陰謀論者がいたら、「あなたの言うユダヤ人(フリーメーソン)ってどういう人?」と質問してみるのも面白いかもしれません。

残念なところは、日本における陰謀論の歴史や、陰謀論が受け入れられる理由についての考察が少ない点です。もっとも、著者の意図はタイトルに示されているように、世界における陰謀論を概説することですから、この考察がなされていないのは当然かもしれませんが。
日本の陰謀論は大半が欧米から輸入されたものです。また、ユダヤ人やフリーメーソンにまつわる陰謀論は、キリスト教界の敵意が主な原因です。つまり、「ユダヤ人やフリーメーソンは反キリスト教的思想を広めようとしている」という偏見から陰謀論が生まれています。これはこの本の中で強調されています。
ところが、日本ではキリスト教の影響はほとんどありません。そのため、欧米から陰謀論が紹介されたときに、ユダヤ人やフリーメーソンに対する宗教的敵意が抜け落ちました。これでは陰謀論自体が成立しなくなるはずなのに、なぜか成立してしまいました。誰かこの奇妙な事態に関する説明をしてくれないものでしょうか。

陰謀論の入門書としては、次の二冊もお勧めです。
検証 大震災の予言・陰謀論 “震災文化人たち”の情報は正しいか
検証 陰謀論はどこまで真実か パーセントで判定(どちらも文芸社