バッタもん日記

人生は短い。働いている暇はない。知識と駄洒落と下ネタこそ我が人生。

大震災と科学不信

3月の大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故は日本に多大な被害をもたらしています。その被害の一つとして見逃せないのが、日本人の科学不信の悪化ではないかと大いに懸念しています。
事故発生後、政府、東京電力、科学者の説明は二転三転し、被害は深刻化の一途をたどっています。大気汚染や水質汚染、伝染病と違って実感することができず、さらに終息の時期も全く不明のため、我々は大変な不安の中での生活を余儀なくされています。その結果、日本人の心に「政府不信」「科学者不信」が植え付けられてしまったのではないでしょうか。

この状況に便乗し、疑似科学やインチキ健康法を広めようとする人々が活動を活発化させています。ホメオパシー団体は「放射能のレメディ」なるものを売りだし、マクロビオティック信奉者は「玄米、味噌汁、梅干し、海藻が放射能に効く」と宣伝し、乳酸菌信奉者は「米のとぎ汁を発酵させて飲んだり吸い込んだりすれば放射能に効く」と宣伝しています。
ホメオパシーが全く効果のないインチキ医療であることは既に証明済みですし、上に挙げたような食品が放射線放射性物質に効果があるという十分な証明もなされていません。

余談ですが、乳酸菌が放射線の影響を抑制すると主張する科学論文は確かに存在します。しかしそれは、「致命的な強さの放射線」を「短時間」照射した「動物に」、「乳酸菌製剤(粉末)」を与える、という実験に基づくものです。今の状況は、「弱い放射線」を「長期間」浴びている「人間が」、「乳酸菌を含んだ食品を」食べる、というものです。これでは条件が違いすぎて、参考にはなっても証明にはなりません。

上記のような健康法を実践している人のブログなどを見ていると、根強い科学不信が見受けられます。震災後にさらに悪化したようです。科学者や政府の言うことは信じないのに、ネットの情報を信じるというのもよく理由がわかりません。一種の「反権威」「反体制」思想でしょうか。

日本では憲法で思想信条の自由が認められていますので何を信じようと自由なのですが、「科学」を信じないということは、「信頼できる事実に基づき、論理的に考える」ことを放棄することであり、非常にまずいと思われます。一度科学を捨ててしまうと、後はオカルトにのめり込んで戻れなくなるだけです。

科学者でありながら妥当な説明を行えず、結果として国民に科学不信を植えつけている人々の責任は重大です。

追加:
時代の風:科学と「新時代の信仰」=東京大教授・坂村健毎日新聞
http://mainichi.jp/select/opinion/jidainokaze/news/20110731ddm002070064000c.html